備忘録

日々の出来事やその日に仕入れた情報をお届けします


Thursday, December 19, 2002

今日はテレビネタを2つ。

日本で流れているアサヒのビールのテレビコマーシャルを見るとはなしにぼんやり見つめていたら、高橋邦典さん(クニさん)が登場していました。この方、ボストン在住のアメリカを代表するフォトジャーナリストで、人の表情をとらえるのがこんなにうまい人もいないというくらいのカメラマンです。特に僕は、クニさんのスポーツ選手を写した写真が大好きで、その腕前にホントほれぼれしてしまいます。ホームページでその作品を是非堪能してください。

実は、この世界的なカメラマンの名前と僕の名前が並んだことがありました(なんて、おそれ多いことだ)。NHK第2のラジオ英語の講座を朝早くから聞いていた人もたくさんいると思います。僕もアメリカに行く前には毎日聞いていました。その中の「ラジオ基礎英語3」という番組の昨年のスキットの舞台がボストンで、ひょんなことから僕はテキストの巻頭カラーページの写真を現地特撮部員(?)として提供していたのです。そして、昨年の11月号ではそのクニさんの写真と一緒に採用されることになり、名前が並んだというわけです。というわけで、そのテキストは僕の宝物として子々孫々まで継がれることになるでしょう。

もう一つは、先日ふと合わせたチャンネルで、駆け出しのイラストレーターだという24歳の女性が「幸せ」についてコメントしていたのを聞いて、なるほどなあと印象に残った言葉。たまたま目に留まった番組でしたから、いったいどんな番組なのか、はてはそれまでのいきさつなど全く分からない状態で、耳に飛び込んできた言葉です。

「あなたにとって幸せとは」と聞かれた彼女のコメントは「悔しいと思うこと」ということでした。

売れないイラストレーターとして不安な日々を送る毎日の中で、心を病むまでになってしまった彼女が、そこから回復し、そして以前と同じような日々を送りつつも、今は不安を感じるのではなく、ライバルや先輩を見て「悔しい」と思えるようになったことが幸せだとコメントしていました。悔しいと思えるからこそ、次に向かって頑張れると。

負けず嫌いの僕も、そういえば何だか最近とんと「悔しい」と思うことが少なくなったような気がします。丸くなるにはまだまだ早いはず。ここいらでもう少しセンサーの感度を磨かないと。

ちなみに余談ながら、帰国以来身体的には確実に丸くなってしまっていて、実に体重は5kgも増えてしまいました。やばい、やばい。丸くなるにはまだ早い。


Wednesday, December 11, 2002

東京って、こんなに寒いトコなんでしょうか。2日前に降った雪も、いまだに我が家の周りの畑を覆い尽くしたままで、ホント、寒々とした光景をさらしています。ボストンの寒さと比べたら序の口どころの話ではないでしょうが、なんともはや、思い込みの激しい我が身はそう簡単には修正も利かないようで、はあ。

ところで、今日とてもおいしいお菓子をおすそ分けしてもらったので、その報告です。木曽路の銘菓という澤田屋の「妻籠の秋柿と栗」というのがそのお菓子で、それはもううまいのなんの。小ぶりの干し柿の中身をくりぬいて、そこに栗きんとんが詰められている手の込んだものです。一見すると単なる干し柿のようでありながら、一口かぶりつくとなんとも不思議な食感。

栗きんとんは、栗の産地として知られている小布施の栗に魅せられた、「すや」の七代目赤井万助が考案したお菓子。現在では東濃地方一円で作られるほどの銘菓となっています。ちなみに、「すや」というのは中山道の中津川宿で酢を売っていた十八屋から綿々と続くお店で、まさに「酢屋」からとられた名前です。安藤広重が描いた「木曽街道六拾九次」の中で、中津川宿は晴雨それぞれを描き分けたため2枚登場するのですが、さすがにこのお店が登場することは無いものの、同じ頃の木曽路を歩いた蜀山人の「壬戌紀行」にはしっかりと名前が登場しています。

というわけで、妻籠の秋柿と栗、おためしあれ。


Monday, December 9, 2002

そもそも我が家の暖房といえばこたつしかないこともあって、寝る時には一切熱源の無い状態で布団にはいることに。そうすると、朝方にはすっかり冷えきった部屋の中で、目覚まし時計の鳴るのが早いか、つんと冷えた空気に肌を刺されるのが早いかという状態で、朝の目覚めを迎える今日この頃。今日はやけに早く目が覚めるなあと思ったら・・・いやはや、東京はすっぽりと冬将軍の懐に包まれてしまったようで、朝には外の景色はすっかり雪化粧をした上に、一向に雪が降り止む気配も無い状態でした。今年は、春から一貫して季節が1ヶ月ほど早くずれて訪れているようですね。

さて、先週末は2つほどパーティーに出席しました。まず金曜日には、毎週水曜日の夜に活動している研究所のバレーボール部のメンバーの送別会を、忘年会を兼ねる形で行いました。次のポスドク先への移動が決まったTさんは、僕が初めてこのバレーボール部に顔を出した時にいろいろと世話をしてくださった方。同い年だということもあって、わずか9ヶ月という短い期間にあれこれと有意義な時間を共有することが出来ました。本当に感謝してます。新天地でも頑張ってください。

翌土曜日にはハーバード大学でポスドクをしていた時のボス・Nickに会いました。なんでも、国際プロジェクトの一員として日本での打ち合わせに来日したとか。主催した日本人の方のはからいで、せっかく昔のボスが来るのだからと、僕を夜の食事会に招待していただいたというわけです。場所は池袋のホテルメトロポリタン。先日のパークハイアットに続き、またまた高級ホテル内のレストランでのフルコースを堪能させていただきました。

13人を集めたそのディナーの席には、糖鎖研究の分野で飛ぶ鳥を落とす勢いで名を挙げつつある面々が、イギリス、フィンランド、アメリカ、そして日本から集まっていました。我がボスは、昨年の7月にボストンのお隣のニューハンプシャー州にあるダートマス大学に移って研究室を構えていますが、彼と会うのは僕がアメリカを離れる時にわざわざ車で2時間の距離を会いに来てくれて以来のこと。3時間のディスカッションもざらなボスとあって、会うや否やすぐさま仕事の話を始めたのは、まあご愛嬌です。

実はこの時、もう一つとても嬉しい出来事が起きました。レストランを探すべくホテル内をうろうろしていると、突然後ろの方から「やべくん!」と僕を呼ぶ声。はて、こんなところで誰だろうと後ろを振り向くと、そこにはロシュ時代に同じ研究室で机を並べていた先輩が立っていました。現在はアメリカのミネソタ大学で研究を続けている方ですから、こんなところで約5年半ぶりに会うとは奇遇の極み・・・。と、さらにびっくりが重なって、実は先輩は我がボスが参加している国際プロジェクトの一員として帰国し、これから僕が参加しようとしているディナーに向かうところだとか。いやはや、世間が狭いのか、はたまた、よっぽどの腐れ縁なのか。

というわけで、ディナーの席上、英語での会話に混ざって、日本語でも大いに盛り上がったのでした。世の中、何が起きるか全く持って分かりませんな。


Tuesday, December 3, 2002

備忘録の更新を怠けている間に、大リーグのワールドシリーズはアナハイム・エンゼルスがお家芸の粘りを存分に発揮して大逆転での制覇。いやはや、あのエンゼルスがねえと、かなりびっくりな出来事でした。

勝因としては、彗星のごとく現れたK・ロッドことロドリゲスの三振ショーやらMVPのグラウスのパワーやら、はたまたレッドソックスからクビを言い渡されて流れ着いたエクスタインの活躍やらが挙げられていますが、僕はやっぱり監督の功績かなあと思います。就任3年目でチームを頂点に導いたマイク・ソーシア監督ですが、3年前に弱小チームに就任するやいなや「このチームで優勝出来ないのはおかしい」と、ことあるごとに周囲に嘯いて、冷たい視線を浴びていたのですが・・・。今シーズン前にはそれを実証するかのように、アリーグ西地区を昨年制したマリナーズに41ゲームも離されながら、大きな補強をするでも無く同じ陣容でシーズンに突入しました。そしてこの結果。監督の言葉は自分を鼓舞する言葉でも誇張した表現でも無く、今年の優勝で自分の見る目の確かさを身をもって証明したということになりますね。そういう意味で、とても感動的な出来事でした。

ソーシア監督は、ロサンゼルス・ドジャース歴代最多の試合にマスクをかぶった名キャッチャーとして知られ、ピアザにその座を譲ってパドレスに移るまで、実に13年間もドジャースのホームプレートを守っていた人。81年と88年のドジャースのワールドチャンピオンも経験し、プレーヤーとしても成功しています。で、この監督の何がすごいのか。

野球を職業とする者として、頂点に3度立ったというその実績が、野球の技術や知識が超一流だということを物語っています。でも、超一流の監督は他にもごまんといますから、やはり、注目すべきは彼の人柄かなあと思います。ドジャース時代以来、今も2人のお子さんと奥さんと一緒にロサンゼルス近郊に住む監督は、アナハイムまで120kmの道のりを車で通っています。その理由は「シーズン中の子供たちと過ごせる唯一の時間が、学校に送って行く車の中だけだから」だそうで、前日の試合がたとえ深夜に終わろうが、そのまま車で家に帰り、翌日には早く起きて子供たちを学校に送るとか。

そんな心意気は、職場であるチームにも浸透していて、就任以来のスローガンが「コミュニケーション」というように、常に選手と語らうことでお互いを信頼することからすべてが始まることを実践しています。球団の身売りが決定済みで、しかもいまだに買い取り先も決まっていないこのチームにあって、こんなに一致団結した雰囲気を醸し出しているのも不思議だなあと思っていましたが、すべては監督の人格のたまものなのかもしれません。人の心に動かされた人の行いは、何にも増して強いことをエンゼルスが示してくれたような気がします。



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